東芝製の1チップマイコンを市場流通在庫から調達しながら何年も生産してきた製品があります。
しかし、最近このマイコンが速やかに調達できない状況が見え始めたため、今後をどうするかお客様と検討しました。
深堀調査して調達先を再検討しましたが、安定的に調達できる仕入先は見つからず、また生産中止となってからかなり年数が経過していることもあり、同じマイコンを継続的に調達する見通しが立ちませんでした。
今後について検討を重ねた結果、お客様が、この製品を今後4~5年間、生産する必要があると判断されたことで、採用しているマイコンを別の部品へ置き換えて、現在の製品を継続生産することになりました。
実際に、今回お客様と品質や納期を具体的に検討する中で見えてきた電子部品リプレイスメントのポイントは3つ。
1、基板を改版するか、しないかです。
ピン数、ピン配置、パッケージサイズなど、互換性のある部品へ置き換えると基板変更が伴わないため、これがお客様にとっては理想です。
しかし、今回は、マイコンだけでなく、同じ基板上に実装されていたROMなども生産中止品で今後の部品入手性が不透明であったことから、FPGAを使って最適な基板を新しく作り変えることにしました。
実際の設計では、納期を優先して、すべての機能をFPGAで作り込まず、東芝1チップマイコンに内蔵されたザイログ社のCPUを採用しました。
また、基板の改版と合わせて、設定保持機能用のボタン電池をEEPROMに代替したことで電池交換が不要となりメンテナンス性が向上しました。
2、次に、ソフトウェアを変更するか、しないかです。
基幹部品の置き換えでは、機能充実や改善の視点でソフトウェア変更も検討されますが、変更する場合は、期間やコスト的に大がかりになります。
今回は、対象のマイコンが搭載されたCPU基板のプログラム変更をせず、またその周辺基板と互換性を持たせてそのまま動作させること、つまりソフトウェアを1ビットも変更しない前提で進めました。
3、最後に、ご提供いただけるものが何かです。
必要になるのは、回路図、ソースコード、マニュアルや操作ガイド、製品本体や基板、性能を確認する試験治具や装置などがあります。
今回は、マニュアルや操作ガイドの情報が限定的で詳細仕様が不明であったため、互換性を確保するための調査にかなりの時間を要しました。
電子部品リプレイスメントでは、ご提供いただけるものも大変重要となります。
結果として、東芝製1チップマイコンの在庫がなくなる前に基板改版を終え、生産を継続させることができました。現在は、不具合もなく量産を続けています。
電子機器を設計、生産されている会社様にとって、廃止部品対策は今後も大きな課題と考えられます。私たちは、お客様の課題に対して独自の技術力で課題解決することを追求していきます。
まとまった情報をご覧になりたい方はリーフレットを作成しましたので、ご覧ください。